圧巻

siroi_mogutan2009-02-03

先日紹介した天童荒太さんの「悼む人」とともに第140回直木賞に輝いた山本兼一さんの「利休にたずねよ」を読み終えましたが、これは圧巻でした。さすが直木賞受賞作と唸るのはありがちな話として、それがPHP研究所刊というのもちょっと驚きの1つ。こういう本は以前は、新潮社か文藝春秋と相場が決まっていたものですが、最近は大分傾向が変わりました。

物語は、利休が秀吉から切腹を命ぜられ、切腹する日から始まります。そしてどうして利休がそのような運命をたどったのかを時間を遡って解きほぐしていくのです。

いろいろ明らかになってくる利休の人生。それはおのれの美学を貫き、天下人の秀吉からでさえ、その才能を嫉まれることになるのです。

そういう才能を開花させたきっかけは何だったのか、利休の美学はどこから生まれたのか、物語はどんどん時間を遡り、利休が19歳、宗易でもなくまだ与四郎と言われていた魚屋の放蕩息子時代まで辿りつきます。

そこであ明かされる利休の人生を決定づけた出来事。正統かつゆるぎない複線を鮮やかにそして明確に解き放つクライマックスまで一直線です。

いやはや、これは読み応えがありました。

物語に京都にある名刹大徳寺が幾度となく登場します。私も京都で好きなお寺の上位に入るこの素晴らしい塔頭で構成されるお寺は、この時代から重要な機能を果たしていたんですね。そういえば、今は開かずの門になっている勅使門があったような記憶もあります。

うーん、京都を舞台に繰り広げられた物語を読んだら、そりゃ京都に行きたくなるのは人情ですよね。この春は上洛できるんでしょうか。